「一遊和会」の歌の慰問にわが盛りの
昭和を思ひ胸熱くなる
E.K
ジグソーパズル飽きし頃かと介護員
ツリーのちぎり絵すすめくれたり
Y.I
変はりなく毎日ベッドに過ごすわれ
散髪午後の気持ち晴れやか
T.T
先輩の豆腐料理の食堂へ
油揚げ定食にがんもどき付きで
S.I
先生と車椅子ダンス踊りたり
ワルツのステップ心ウキウキ
M.S
黒塀の越えて紅葉の赤々と
丙申堂の古き庭先
A.S
テレビ画面に諦め歩む難民の
列果てもなし冬はもうすぐ
A.S
仏壇の奥より幼の写真出づ
夫に聞きたる夭逝の兄
E.K
早や暮れて師走に浮かぶ師の言葉
冬至冬なか冬の始まり
E.K
肺腫瘍の手術決まりし父よりの
前夜の電話声の優しき
Y.S
日本海の荒波のごときリハビリに
直るを信じ痛みに耐ふる
T.S
あかね色の水平線に沈みゆく
大き夕陽をみやげに施設へ
T.S
皆そろひ夕食かこむ日々(にちにち)を
来年もまた続けと祈る
T.S
もみぢ散らす冷たき雨の上がりたり
晴れて光をいつぱいに受く
T.S
わが胸に顔をうづめて眠る猫
辛き野良の日忘れよ今は
H.I
色々の食事療法三度目の
検査にかける完治の二文字
H.I